富士山みたいに愛されたい。

もうひとつ、富士山は私にとって特別な意味を持った山です。貧しさのため、希望が叶わず工業高校に進学することになった私。中学3年生のとき、投げやりになってろくに学校に顔を出さない時期がありました。そんな私に目をかけてくれて、ことあるごとに山登りや食事に誘ってくれたのが恩師・松尾先生です。当時、先生もまだ若く、給料もそう高くなかったはずです。けれど、私にとって生まれて初めてのレストランでごちそうをしてくれたのも、あの頃人気だった立体映画を初めて見せてくれたのも松尾先生でした。思春期だった私は面と向かってありがとうを言えませんでしたが、心の中では感謝でいっぱいでした。